戦評・コラム
第96回都市対抗野球大会 東京都二次予選 第4代表2回戦 vs NTT東日本
2025.06.20 [Fri] 10:00VS NTT東日本
場所:大田スタジアム
下薗咲也の好救援や植田匡哉の本塁打で追いつくも終盤に力尽き2年ぶりの都市対抗出場を逃す
都市対抗出場最後の枠をかけた第4代表決定トーナメントに回っていたセガサミーは2回戦でNTT東日本と対戦し、見せ場は作ったが5対7で敗れ予選敗退が決定。2年ぶりの都市対抗出場は果たせなかった。
先制点を奪ったのはセガサミーだった。2回に新人ながら前日から4番を任されている加藤巧也がライト前安打で出塁すると、黒川貴章も死球で出塁しチャンスを作った。さらに加藤が相手捕手の二塁送球の逆を突き、三塁を陥れると、片岡大和のスクイズが相手投手の野選を誘い加藤が生還。先制に成功した。さらにその後にバント失敗はあったものの、相手投手の牽制悪送球もあってもう1点を追加し、2点の先制に成功した。
しかし直後の3回、先発の尾﨑完太が1死から4連打を浴びて、すぐさま逆転を許した。西田真二監督は「勝てる投手になるには得点後は無失点や最少失点に抑えないといけません」と期待ゆえに苦言を呈したように、主導権をすぐに奪い返されてしまった。
すると、続く4回にも安打と四球で1死一、二塁のピンチを招いて降板。ここで4年ぶりの現役復帰ながら今回の予選で好投が目立つ陶久亮太がマウンドに送られたが、陶久も相手打線の流れを止められず、2対5とリードを広げられた。
その後はチャンスが作れずに嫌な展開が続いたが、それを打破したのが尾﨑と同じ2年目左腕の下薗咲也だ。
コーチ兼任の陶久が「普段の取り組みが素晴らしい。休まずに投げ続けたり、表情を変えずに黙々とやれたり、そういう部分が結果に繋がるんだと思います」と称賛する下薗は5回途中からマウンドに上がると、制球と思いきり良く球を投げ込んで無失点を続けていく。
すると7回に打線が応える。中川智裕と谷口嘉紀の安打でチャンスを作ると、植田匡哉が「今までの分を取り返すしかないと思いました」と2ボールから甘く入った球を見逃さず振り抜くと、レフトスタンドに飛び込む起死回生の同点3ランに。ベンチ・スタンドはお祭り騒ぎで殊勲の植田を迎えた。
さらに8回も下薗が無失点に抑え、試合は同点のまま最終回に持ち込まれた。しかし、下薗が先頭打者に二塁打を許すと、続く打者はバントを2度ファウルにし追い込んだものの「力んでしまいました」と下薗が悔やんだように、甘く入ったカットボールを右中間に運ばれ勝ち越しの三塁打を許した。代わった伊波友和も1死を取ったものの続く打者の詰まった打球がセンター前に落ち、これがダメ押し打に。その裏も三者凡退に抑えられ、今年の都市対抗への挑戦が幕を閉じた。
2年連続の予選敗退に選手・スタッフは悔しさを隠しきれず涙を流す者も複数いた。特に先発の尾﨑は「実力不足かなと思います」と言葉を絞り出し「(エース格として)頼られる嬉しさの反面、辛さ・厳しさがありました。本番で結果を出せないと意味が無いので、本番に強い投手になりたいです」と声を震わせた。
西田真二監督が「今大会のラッキボーイ」と称した下薗も好投を続けてきたが、最後に力尽き「怪我人もいる中で、投手陣全員と(ヘッドコーチの)吉井さんでやってこられたのは良かったですし、ベンチに入るか・入らないかの投手でしたが、こういう経験までさせてもらったので、次に繋げないといけません」と涙ながらに雪辱を誓った。
猛暑の中の連日の応援にも選手やスタッフは感謝を惜しまないだけに、西田真二監督は「皆さんが応援してくれているのでね・・・残念です」、植田も「2年連続で都市対抗に行けませんでしたし、勝った試合を1試合しか見せられず申し訳ないです」と肩を落とした。
だがこれですべての戦いが終わったわけではない。西田監督は「野球を続けるなら、この悔しさを生かさないといけません」と言い、9月には日本選手権予選を控え、来年の都市対抗への雪辱に向けても、日々の積み重ねが雪辱の原動力となる。
主将の高本康平が応援団への挨拶の際に「また1から頑張るので、また応援してもらえるチームにしたいと思います」と誓ったように、1つの挑戦が終わるとともに、再び檜舞台に戻るための挑戦が今まさに始まった。
文:高木 遊(株式会社スポーツオフィスタカギ)
写真:政川 慎治







