コラム
トレーナーと二人三脚で挑み続ける身体づくり~植竹勇太選手 初優勝へ視界良好
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2024年4月9日
セガサミーホールディングスに所属するプロゴルファーの植竹勇太選手。昨シーズンの最高成績は3位タイ、賞金ランキング57位。「絶対に曲がらない」と言われるドライバーの精度を武器に、近年力をつけてきました。そんな植竹選手は毎年オフシーズンになると岡山県・津山市を訪れます。津山市は岡山で第三の規模をほこる都市であり、人口は約9万5千人。山々に囲まれた盆地が広がり、古くは津山藩の城下町として栄えました。植竹選手が訪れた目的はプロデビュー後からお世話になっているトレーナーのもとで行う身体づくり。コツコツと続けてきたトレーニングの成果は本人だけでなく、トレーナーも太鼓判を押します。今シーズンこそ悲願のツアー初優勝を目指す植竹選手と、彼の身体づくりを支える坂本トレーナーに話を聞きました。
3月上旬、まだ分厚いコートが必要な程に寒さの残る津山市内の元ゴルフ練習場に、植竹選手の姿がありました。その腰には古タイヤが付いたベルトが巻かれています。
時刻は午前9時過ぎ。プロゴルファー仲間らと坂を何本も全力疾走することから、この日のトレーニングは始まりました。
坂道ダッシュをこなしたあとは、トレーナーの指導を仰ぐため、近くのトレーニングルームへ移動します。
植竹選手をプロデビュー後からサポートしているのが、女子プロゴルファー・渋野日向子(しぶのひなこ)選手らを高校時代にサポートした実績を持つ津山市在住のトレーナー、坂本さおりさんです。
- -今日はどんなトレーニングをされるんですか?
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坂本
最初行った芝地の坂道でタイヤを引いてのダッシュは、オフシーズンは必ず取り入れています。筋力を落としたくないし、効率よくトレーニングができます。今からは体軸、いわゆるコアのトレーニングを行います。コアを鍛えながら、手も足もどこでも動かせるようにすることを私は一番大切にしています。コアをまっすぐに使ったまま、どの姿勢になっても軸がぶれないようにする。一番大事になるのが腹筋です。手も足も腹筋から動かしているんです。後は関節の動きです。股関節、肩関節などの周りの細かい筋肉を、腹筋から繋げていって動かせるようにトレーニングしています。
- -植竹選手がいらっしゃったのは、大学を卒業した頃ですか?
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坂本
大学を卒業して、プロになった次の年だったと思います。
- -来た頃と今ではやはり変化が?
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坂本
全然違いますね!当たり前ですけど、プロゴルファーになっているということはみなさんゴルフは上手なんです。ですが、毎シーズン同じ選手が賞金王になったり、毎週同じ選手が優勝するわけでもない。でも、強いと呼ばれる選手は常に上位にいますよね。どの競技でも同じですが、統計を出していくと強い選手は身体の動かし方、使い方がとても上手です。そこから考えると、調子が悪い時はゴルフが下手になったのではなくて、身体の使い方がおかしくなっている。そこを修正できれば、継続していいイメージ、結果が出せるようになると考えています。
坂本トレーナーのお子さんは、植竹選手が在籍していた東北福祉大学(宮城県)ゴルフ部出身。植竹選手の1学年後輩ということもあり、植竹選手がトレーニングを頼むようになったそうです。
- -昨シーズンの成績や感触を踏まえて、このオフのトレーニングで意識されていることはなんですか?
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植竹
基礎筋力をアップして、スタンダードの状態でを上げたいと思っています。最高値を上げるのではなくて、平均値を上げていくイメージですね。
- -ドライバーの安定性はツアーでも屈指の数字を残しています。その中でパーオン率、パーセーブ率を上げていくことが必要だと思うのですが、そのためにはもう少し飛距離が欲しいというイメージでしょうか?
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植竹
そうですね。コースのセッティングもタフになってきて、パー70やパー71も当たり前になってきました。難しいパー4でパーセーブしていくためには、飛距離が必要だと感じています。それと同時に飛距離を出したくて思いきりスイングすると、どうしてもブレてしまいます。スタートホールはいいんですが、最終ホールまで持たないことが多かったので、軽く振りつつもヘッドを走らせて、最終ホールまで安定的に飛距離を出したいと考えています。そのための身体づくり、身体の使い方を身につけるために坂本さんのトレーニングに通っています。
- -トレーニングを継続してきて変化は感じられていますか?
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植竹
感じています!腹筋の使い方がだいぶ良くなってきていると思います。
「最近、腹筋や腰の使い方が分かってきた気がするんです」と話してくれた植竹選手。坂本トレーナーの元に通い始めて早7年。結果が出るまで時間がかかると言われるインナーマッスルのトレーニングの成果が、徐々に見え始めています。
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坂本
今日は軽めのメニューでした。普段はもっと厳しいですよ!私は選手たちに「鬼」と呼ばれていますから(笑)スイングに無駄がない方がゴルフはいいですよね。そのためには、身体を上手に使えることが大切です。あとは長く活躍して欲しいので、絶対に怪我はして欲しくない。そのためにトレーニングは必須なんです。
植竹
坂本さんの元に通うようになってから、確かに怪我をしなくなりましたね。あとは自分の身体を思ったように動かせるようになりました。コアのトレーニングも最初は全然身体がついていかなかったんです。でも今では、腹筋で自分の身体をしっかり持ちあげたり身体をコントロールでき始めてきました。それによってスイングにもポジティブな変化が出てきたと感じています。スムーズにスイングができているし、軽く振ってもヘッドが走ってくれている感じが出てきました。
- -植竹選手はどんな性格ですか?
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坂本
植竹選手はすごく頭のいい選手で、伝えたことをそのまま表現することができる選手です。あとはとても真面目でゴルフが大好きですね。トレーニングは身体を鍛えるため、だけではなくて、いいスイングをするため、精神的に強くなるため、さらには怪我をしないためになど、さまざまな目的があります。男子は比較的、背筋が強くて猫背になる選手が多くいます。それを腹筋にフォーカスすると背中が立つので、アドレスの形も変わって来るんです。植竹選手はそれを早く理解してくれたので、今では全く別人ですね!昨シーズンも良くなった印象がありましたが、今シーズンの方がいいです!私はトレーニングの専門家で、ゴルフの専門家ではないですが、植竹選手はドライバーの安定感が絶対的な武器です。そこにアイアンの精度などが合致すれば、今シーズンは優勝できるチャンスがあると思いますし、優勝して欲しいですね!
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植竹
最近は肩の力が抜けてきたので、いい形でインパクトまで迎えられている感触があります。感覚がつかめたのは本当に最近ですね。腹筋や腰の使い方がわかってきて、スイングの感覚にちょっとずつ合ってきていると感じています。
- -今シーズンこそは初優勝というのがひとつの目標になると思います。そのために必要なことはなんだと考えていますか?
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植竹
年間平均スコアを60台にすることが必要だと考えています。賞金王争いをする選手は平均スコアが69ぐらいなので、安定的にスコアを出していくことができれば、4日間の中で自然とビッグスコアが出る時があると思っています。昨シーズンはラウンド中に自分のなかで「何かが違うな」と思っても、ラウンド後半の方で原因に気づいたらその時にはもう遅いということがありました。大体はアドレスが違うんですけど、今は身体の感覚がいいので、そこにいち早く気づけると思います。いいアドレスを取ることができれば、自然といいスイングができるので、このオフのトレーニングの成果を出せたらいいなと思います。
- -最後になりますが今シーズンの目標と、セガサミーの「感動体験を創造し続ける」というミッション/パーパスのもとでファンの皆さんにどのようなゴルフを見せていきたいか教えてください
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植竹
まずはツアー1勝を目指します。そして、そこから2勝目、3勝目と繋げていけるシーズンにしていきたいですね。勝つことももちろんですが、ギャラリーの皆さんが見ていて楽しいゴルフをしていきたいと思っています。僕自身、このオフはすごく充実感があるので、そんなゴルフを見せられる自信も出てきました。トレーニングで掴んだ感触がスイングに繋がってきているので、自分自身も今シーズンが楽しみです!
終始笑顔でインタビューに応じてくれた植竹選手からは、自信がみなぎっているように感じました。『絶対に曲がらないドライバー』という強さを武器に、さらなるしなやかさも加わった植竹選手の初優勝は、きっと近いはずです。