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2023.11.08 感動体験『幾多の危機を乗り越え、「スマスロ北斗の拳」のヒットを生み出したサミーの開発・生産・営業力に迫る【後編】』

セガサミーグループが時代を超えて追及しているお客様のご期待を超える価値「感動体験」。開発者などのインタビューや特集記事など、ここでしかご覧いただけない様々なレポートをお届けします。
- 感動体験レポート
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2023.11.08
幾多の危機を乗り越え、「スマスロ北斗の拳」のヒットを生み出したサミーの開発・生産・営業力に迫る【後編】
「スマスロ北斗の拳」の企画構想から、好評を得た試作機の評価までを追った【前編】。
【後編】では、開発後期の型式試験から、困難を極めた部材調達、生産を経てホール導入に至るまで、また、稼働後のユーザーの皆様や周囲の反応などについてもインタビューしました。
前編をまだご覧になっていない方は、是非前編からご覧ください。

- 参加者
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開発担当A
「スマスロ北斗の拳」のプロデューサー。企画立案をはじめ、出玉設計や映像・演出、筐体デザイン、サウンドなどの各担当と連携し開発業務全般を担う。
また販売前後の広報活動もプロデュース。
ハード開発担当B
ハード(機械・機構)設計を担う。「スマスロ北斗の拳」の開発では、購買・生産部門と連携しながら部材不足による代替品*の検証なども行う。
*代替品の使用は本来認められていないものだが、新型コロナウイルス等による世界的な電子部品不足を受け、特例的に期限等条件付きで認められている
生産/生産企画担当C
生産計画の策定や部材納入、資材管理など生産工程に関わる計画・統括管理を行う。
生産/購買担当D
部材の購入計画策定、購入先の選定など部材調達全般を担う。
営業企画担当E
開発部門と連携しながら、販売戦略立案やマーケティング・PR施策を検討・実施。
営業担当F
遊技機のホール様への営業(販売)活動、アフターフォローを行う。
妥協しない――。こだわりを貫き通した型式試験
――「スマスロ北斗の拳」は、「型式試験」に適合するまでに通常よりも時間を要したと聞いています。

開発担当A:
開発を済ませた機種をホール様に導入いただくためには、保安通信協会(以下、保通協)が行う「型式試験」と各都道府県が実施する「検定」という2つの審査で合格しなければなりません。特に、その機種が風営法や関連規則等に定められた通りの規格になっているかを審査される「型式試験」は非常に厳格で、規格通りになっていなかった場合、「不適合」となり、その型式は世の中に出せなくなります。そのため遊技機メーカーは、不適合になった場合も想定し、1機種で何型式もつくり、保通協に申請します。

生産担当C:
「スマスロ北斗の拳」は当初、スマスロの解禁時期である2022年11月に適合を間に合わせることを目指して、サミーとサミーグループのメーカー3社、合計4社から申請する形をとっていました。生産部門では、当時ヒット中の「パチスロ甲鉄城のカバネリ」の生産に追われている中、さらに「型式試験」に向けた機械の製造を一手に引き受けていたのですが、メーカーごとに使用しなければならない基板や生産体制が違うため、正直かなり大変だったんです。でも、生産部門が悲鳴をあげようものなら、「早く適合を取ることが最優先だ」と一蹴される。それぐらい、適合に向けて関係者全員が必死でした。
開発担当A:
しかし、なかなか適合せず、結果的に申請した型式数はサミー史上でも類を見ないほどになりました。それでも、ベストな「スマスロ北斗の拳」をホール様、ユーザーの皆様に届けたかったので、適合率を上げるためにスペックやゲーム性を妥協することは一切しませんでした。

営業担当F:
2022年11月頃からスマスロの市場導入が開始されていましたが、その時点で「スマスロ北斗の拳」は適合していませんでした。ホール様からはサミーのスマスロを待ち望む声が多く聞こえていたので、むしろ「開発部門が一切妥協せずにつくっていますので、もうしばらくお待ちください」と状況を伝えることもセールストークとして使っていました。期せずして、「遅れる分、すごいものができてくるのではないか」というホール様の期待感の醸成につながりました。
開発担当A:
会社全体からのサポートを得て最後までこだわりぬいた結果、開発部門として納得できるスペック(仕様)の型式で無事に適合することができました。通知が届いたのは2022年の12月下旬で、皆で「これで年が越せる」と安堵したことを覚えています。
生産担当C:
当時、これでようやく枕を高くして寝られると思いました(笑)。
各部門が連携・協力。部材不足を乗り越える
――型式試験と同時期に、部材不足が深刻化していたと思います。

購買担当D:
開発初期段階の2021年頃から部材調達は進めていたのですが、新型コロナウイルス感染症の流行による影響に加え、追い打ちをかけるように2022年2月にロシアのウクライナ侵攻が始まり、半導体や樹脂、鉄鋼などの部材不足に直面しました。これまでに経験したことのない深刻な事態で、2022年5月頃には、発注した部材が届かない状況となっていました。

ハード開発担当B:
対応として、週1回のペースで社内横断的な情報共有会を開催するなど購買部門とコミュニケーションを密に取りながら、足りない部品をリアルタイムで捉え、販売の最大化ができるように戦略を検討しましたが、事態は日々悪化していきました。一方で、新型コロナウイルス感染症の流行などの影響により部品が調達できない場合は、行政の承認を事前に得られれば同一性能を担保できる部品を採用してもよいという緩和措置が講じられていました。
購買担当D:
それを受けて、足りない部材の代替品を探しては、ハード開発部門に、「この部品はどうですか」「これは使えますか」と持ち込み、短期間で代替基板を用意してもらうといったことを繰り返していました。
ハード開発担当B:
通常は開発完了後に部材を調達して製造するという流れで生産に進むのですが、この時は開発中の段階で既に深刻な部材不足に陥っていたため、調達面を最優先し、その時点で調達できる部材を使って開発するという、本来とは異なった流れで進めなくてはなりませんでした。
また、適合後には本来、揃った部材ですぐに生産が開始されるところですが、部材不足により、適合後も購買部門が調達可能な部品を探し、見つけ次第すぐに開発部門で適合の型式と同じものをつくれるかの検証をし、品質評価まで完了させて生産部門に送り出していました。

購買担当D:
何とかやり繰りをしていた2022年秋頃、止めを刺すかのように、部品仕入れ先の工場が火事になり、調達予定の部品が焼損してしまいました。あの時ばかりは途方に暮れてしまいましたが、とにかくツテをたどったり、インターネットで検索したり、秋葉原に直接仕入れに行ったりと調達のために奔走しました。本来であれば原価はなるべくおさえるべきですが、値段は度外視して、まずは調達することを優先しました。
生産担当C:
一台でも生産台数を増やすために、営業部門とも連携し、市場にある機種を買い取らせてもらい、その機械をすぐに整備して部材をリユースするなどの対応も行っていました。ハード開発部門や営業部門との連携・協力がなければ生産に間に合わなかったと、今でも思います。
初代を知る世代から支持され、予想していた倍の受注数に
――ホール様への営業活動はいつから?

営業担当F:
2023年の年明けから「個別商談会」という形で各ホール様に「スマスロ北斗の拳」を提案していきました。ホール関係者の多くは、初代「北斗の拳」を遊技されていたご経験のある世代ということもあり、実際、機械を見ていただくと、「隙がない」「完璧すぎる」「間違いない」などのお褒めの言葉をたくさんいただき、その反響は私たちが想像する以上のものでした。
その後、全国で営業活動を開始すると、業界関係者たちがSNSなどで評価を投稿してくださり、ありがたいことに「スマスロ北斗の拳」の前評判がどんどんあがっていきました。当初、3万台を目指していましたが、結果的に倍以上のご注文をいただきました。
――予定していた倍の6万台の受注で生産体制は追いつかない状態だったのでは?

生産担当C:
部材不足や、他タイトルの生産も同時進行していたこともあり、最初の生産可能台数は3万台が限界で、6万台を用意するには分納という形をとるしかありませんでした。「何とか分納で進めさせて欲しい」と営業部門に協力を仰ぎました。
営業担当F:
「スマスロ北斗の拳」自体の高評価に加え、「パチスロ甲鉄城のカバネリ」の好調からサミーのパチスロへの期待が高まっていたため、「早く欲しい」というホール様からのプレッシャーは大きいものでしたが、ホール様には正直に状況を説明し、分納への理解を求めました。当初、想定の3万台に対して6万台のご注文をいただいた時点で、さすがに営業担当たちも青ざめていたんです。そんな私たちの様子がホール様に伝わり、本当に厳しい状況だということをご理解いただくことができました。そうして4月になり、ホール様へ順次導入を開始。その後、ハード開発・購買・生産部門の努力のおかげで、少しずつ納期を前倒しすることができ、5月にはご契約いただいた全てのホール様への導入が完了しました。
――テレビCMをメインにした広報はこれまでなかったとか。

営業企画担当E:
「スマスロ北斗の拳」は、初代完全復活をキーワードに、「スリープユーザーの掘り起こし」をテーマとしてプロモーション活動に力を注ぎました。初代「北斗の拳」の遊技経験があり、今は離れてしまった現在40・50代ユーザーの皆様に向けて、そうした世代が一番目にするメディアとして、しばらく実施していなかったテレビCMを活用することにしました。
開発担当A:
ホール様からのご注文数は想像以上でしたが、実際に遊技してくれる人がいなければヒットにはなりません。スリープユーザーが戻ってくるきっかけをつくることはなかなか難しい中で、初代「北斗の拳」という大きなブランド力を持った本機種くらいでしか呼び戻すことはできないのではないか、という思いから、プロモーション活動に大きく予算を割くようにしました。
営業企画担当E:
YouTubeでお笑いコンビの「かまいたち」さんが初代「北斗の拳」を遊技する動画が流行った経緯から、CMでは「かまいたち」さんに出演いただき、「懐かしい。もう一度やってみようかな」と“遊技心”を再び喚起するような演出を目指しました。遊技機のCMは、ホール様への導入開始前に放映されるケースも多いのですが、CMを見て思い立ったらすぐに遊技できるよう、ホール様への導入後に放映を行ったことも高稼働につながったプラス要因ではないかと考えています。また、居酒屋にポスターを貼ったり、電車の中吊り広告も活用しました。一方で、20・30代ユーザーの皆様に向けてはSNSやWEB広告を通して発信するなど、それぞれのターゲットに合わせて施策を工夫しました。
ホールに活気。閉店間際でも遊技し続ける姿に感動
――導入累計台数6万台を突破しました。ユーザーの皆様や周囲の反応、ご自身の心境は?

開発担当A:
初日の稼働状況は大いに盛り上がり、ホール様では立ち見が出るくらいの人気でした。実際、自分でホール様に足を運んだ際には、久々に見る光景に、スリープユーザーが戻ってきたという確かな手応えを感じました。閉店間際にもかかわらず「スマスロ北斗の拳」で遊技するユーザーの皆様の姿を見て、こんなに楽しんでくれているんだと感慨もひとしおでした。
ハード開発担当B:
新筐体かつこれだけの台数が投入されたため、トラブルが起こらないか心配していましたが、大きなトラブルもなくここまで来られて正直ホッとしています。優秀な開発メンバーのおかげです。
生産担当C:
これまでの苦労が吹っ飛びました。困難な状況から3部門が協力することでここまで来られたことも今後の自信につながりました。
購買担当D:
ホール様を覗きに行くと空き台がなく、その光景に嬉しくなりつつも、追加分をもっと早く準備しないと、という気持ちになりました。
営業企画担当E:
今回の「スマスロ北斗の拳」の導入で、明らかにユーザー様が増え、活気あるホールを久しぶりに体感しました。やっぱり打ちたくなりますね(笑)。
営業担当F:
かつて私と一緒に初代「北斗の拳」を遊技していた妻は、現在ではすっかりスリープユーザーとなっていたのですが、CMを見た妻が「打ってみたい」と言っていて。妻が打たなくなってから、こういう反応は初めてだったので、やはり初代ユーザーの皆様には響いているのだなと実感しました。
――今後の展望を聞かせてください。
開発担当A:
開発して終わりじゃない。ユーザーの皆様に知ってもらい楽しんでもらうという視点を持って、今後もより良い開発を目指します。また、疑問や質問を受付している「サミー開発ボイス」*など、ユーザーの皆様と触れ合える場を大切にして、サミーのファンを増やしていきたいと思っています。
*サミー機種をプレイする上で知っておくと、ちょっと楽しくなる情報を開発担当者がお届けしているページ。ユーザーの皆様からの疑問や質問も受け付けている。
ハード開発担当B:
さまざまな困難がありましたが、各部で連携し全社一体となって、サミーの底力を発揮できたと感じていますので、今後もこのような関係を維持・向上させていきたいです。また、サミーの技術力を活かした研究開発をさまざまな形で展開していけたらと思っています。
生産担当C:
これほど厳しい環境下での生産は初めての経験で、サミーの組織力をあらためて実感しました。今後もこの組織力を高めていきながら、ユーザーの皆様に感動体験を提供していきたいです。
購買担当D:
「なんとかする!」という各部門の強い思いと行動力、サミーの組織力を大いに感じた2年間でした。現状に満足せず、挑戦し続けます。
営業企画担当E:
いろいろな部署と協力してこの結果を残せました。この経験や強固になった協力体制は、今後にも生きていくと思います。スマスロを筆頭に、サミーには今、面白い機種がたくさんありますので、是非たくさんの皆様に楽しんでいただけると嬉しいです。
営業担当F:
私はかつて初代「北斗の拳」の営業活動を通じ、お客様に喜ばれることこそ営業という仕事の一番のやりがいだと実感しました。今回、若い営業担当者が同じような経験をできたことは、彼らのこれからの仕事に生きてくるだろうと感じています。開発・生産部門の皆さんがつくったサミーの魅力ある機種を、今後も自信を持ってホール様にご提案していきたいと思います。

©武論尊・原哲夫/コアミックス 1983, ©COAMIX 2007 版権許諾証YRA-114 ©Sammy
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今後もサミー株式会社は、ユーザーの皆様に遊技機を介して感動体験を創出すべく、日々開発を進めていくとともに、販売好調の「スマスロ北斗の拳」をはじめとする主力タイトルの投入を積極的に進めることで、稼働シェアのさらなる拡大を目指します。
当記事の前編は以下よりご覧ください。
「幾多の危機を乗り越え、「スマスロ北斗の拳」のヒットを生み出したサミーの開発・生産・営業力に迫る【前編】」