戦評・コラム
第78回JABA東京スポニチ大会 予選リーグ vs 東海理化
2024.03.09 [Sat] 12:00VS 東海理化
場所:神宮球場
2024年シーズンのオープニングゲームに相応しい青空の下、立ち上がりから選手たちの熱気がグラウンドを支配する。1回裏、今シーズン公式戦のチーム初安打を放ったのは1番の植田匡哉だ。さらに3番高島大輝のレフト前ヒットと5番黒川貴章の四球で満塁の好機を迎えると、6番砂川哲平に二塁後方へのヒットが生まれて2点を先取した。二死から先制打を放った10年目の砂川は言う。
「打った球は、相手投手の得意とするカットボール。何とか打ち返しました」
9番北川智也の四球と2番竹谷理央のライト前ヒット、さらに相手バッテリーのミスに乗じて一死二、三塁としながら無得点に終わった2回表は、やや重い空気が流れた。それでも、先発の舘和弥が1回裏に続いて2回裏も無失点に抑えて流れを渡さない。3回裏に二死満塁から4番打者に適時打を浴びて同点とされるが、迎えた5回表に再び得点機を迎えた。
イニングの先頭となった2番竹谷のセンター前ヒットを皮切りにチャンスを掴むと、二死一、二塁から6番砂川がツーシームをセンター前へ運んで勝ち越し。砂川と同じ10年目の7番宮川和人が四球を選んで二死満塁とチャンスが拡大すると、同じく砂川と宮川の同期である須田凌平がチェンジアップを叩いて走者一掃となる右越え三塁打をマークして点差を広げた。
「10年目がつながりました」
試合後に笑顔を見せてそう語った須田ら、経験値の高いベテラン勢は頼もしいばかりだ。
5回裏に1失点、6回裏に2ラン本塁打を浴びて1点差に詰め寄られるが、試合終盤は投手陣が盤石のリレーを見せた。6回途中から登板したルーキー左腕の武冨陸は、7回裏もヒットを許すことなく無失点に抑えた。8回裏のマウンドで躍動したのは右腕の田中法彦だ。5番打者を難なくセカンドゴロに討ち取ると、6番打者は3球で見逃し三振に。さらに7番打者も、ホップ成分が含まれた力強いボールで見逃し三振に仕留めるのだから、文句のつけようもない。9回表に再び8番須田にレフト前への適時打が生まれて2点差にすると、その裏の最終回は左腕の荘司宏太が満を持してマウンドに登る。昨シーズンから明らかに球質がよくなった印象がある荘司は、8番打者をレフトフライに、9番打者を力のないセカンドフライに仕留めて簡単に二死を奪う。そして、右打席に立つ1番打者は最後に伸びのあるストレートを選択して見逃し三振だ。新戦力も加えた投手陣の危なげないピッチングが際立つ中で、今シーズンの公式戦初戦を勝利で飾った。西田真二監督は言う。
「相手の先発投手(池田大将投手)をしっかりと攻略できたのは大きかった。投げては新人の武冨、攻撃では同じく新人の神山福生もいい働き(途中出場で8回表にライト前ヒット)を見せてくれましたし、それぞれがいい経験を積んで頑張ってもらいたい」
フレッシュな力が躍動して、勝負所ではベテラン勢が輝いた。「共に越えて行く」を合言葉にする今シーズンの思いが詰まったゲームに、チーム力の充実を感じた。
文・写真: 佐々木 亨