戦評・コラム
2024年JABA東京都企業春季大会 1回戦 vs 東京ガス
2024.03.20 [Wed] 12:00VS 東京ガス
場所:大田スタジアム
先発マウンドに立った古屋敷匠眞は、快調な滑り出しを見せた。1回表、先頭打者への初球は151キロをマークして、2球目以降も150キロ台のストレートを連発して圧倒する。最後は153キロのストレートで見逃し三振だ。2番打者をファーストゴロに討ち取ると、3番打者は再び見逃し三振に仕留めて、スコアボードに「0」を刻んだ。
先発右腕がもたらした最高の立ち上がりは、攻撃にいいリズムを生み出す。2回裏、一死からチーム初安打となるセンター前ヒットを放ったのは5番竹谷理央だ。6番須田凌平が、あわやホームランというレフトフェンス直撃の特大二塁打を放ったのは、その直後。一死二、三塁として、7番宮川和人のファーストゴロの間に三塁走者の代走・神山福生がホームを駆け抜けて1点を先制するのだから、流れはいい。
だが、リードで迎えた3回表、古屋敷のピッチングに異変が生じる。イニングの先頭打者である9番打者はサードゴロに仕留めたが、三塁手・砂川哲平の一塁への悪送球で出塁を許す。1番打者を空振り三振に、2番打者をレフトフライに討ち取ってピンチを和らげたが、3番打者にレフト線へポトリと落ちる不運な二塁打を浴びて同点とされた。古屋敷が右手にできたマメに顔を歪めたのは、その1失点したイニングを終えてベンチに戻った後だ。4回表のマウンドに上がった直後はマメが潰れた状態に……。イニングの先頭となった5番打者にライト前ヒットを浴びると、6番打者と7番打者には連続四球で出塁を許して無死満塁のピンチを迎える。8番打者には、2球目に投じた真ん中高めのストレートをライトスタンドへ運ばれて、逆転となる満塁ホームラン。9番打者に四球を与えたところで降板となった古屋敷は、無念の表情を浮かべて三塁側ベンチに消えた。試合後も、その顔は同じだ。古屋敷が4回途中で降板したマウンドを振り返る。
「先発投手としてしっかりとゲームを作り、もう少し長いイニングを投げなければいけなかったのに……」
陶久亮太コーチは、古屋敷のピッチングをこう分析する。
「これだけ失点を重ねたのは今シーズン初めて。ストライク率は高く、ずっとピッチングの状態はよかったので、ここまで点を取られるとは……」
古屋敷の後を受けてマウンドに上がった武冨陸も、嫌な流れを食い止めることができなかった。4回表にはセンターバックスクリーンへ飛び込むソロアーチと、ライトスタンドへの2ランアーチを浴びて点差を広げられる。2本のホームランは、大田スタジアムの上空を舞う強風の影響があったかもしれない。チームにとっては、”不運な風“だったか。いずれにせよ、試合中盤の大量失点は、三塁側ベンチに重い空気をもたらした。
3回以降の攻撃陣は、一度も得点圏に走者を進めることができなかった。三者凡退に終わった3回裏を経て迎えた4回裏は、一死から4番中川智裕がレフト前ヒットで出塁した。だが、後続が併殺打に討ち取られて無得点。6回裏も、1番植田匡哉がイニングの先頭でサードへの内野安打で出塁するも、またしても併殺打でチャンスが潰えた。7回裏を三者凡退で終えると、大会規定により8点差をつけられる中で7回コールドでの敗戦を迎える。
企業春季大会は、5月から始まる都市対抗東京都二次予選の組み合わせに直結する大事な大会だ。大差で敗れた初戦の悔しさを持ち、次戦こそ勝利を手にしたい。
文・写真:佐々木 亨