戦評・コラム
第95回都市対抗野球大会 東京都二次予選 1回戦 vs ゴールドジムベースボールクラブ
2024.05.20 [Mon] 15:00VS ゴールドジムベースボールクラブ
場所:大田スタジアム
「想定外だった」
西田真二監督がそう振り返るのは1回裏だ。
都市対抗野球大会の東京都二次予選。その初戦の緊張感を振り払い、1回表に1点を先制したところまでは想定内だったか。1番北川智也がライトへ二塁打を放ち、3番植田匡哉のセンターへの犠飛で得点した攻撃は、上々の滑り出しだった。ゆえに、直後の1回裏に待っていた悪夢のような時間が信じられない。
先発マウンドに上がった草海光貴の表情は、いつもと変わらず冷静そのものだった。だが、先頭打者にライト前ヒット、2番打者にレフト前ヒットを浴びて、いきなり得点圏に走者を置く苦しい投球を強いられる。すると無死一、二塁から、3番打者に初球をレフト前へ運ばれて1点を失う。4番打者をフルカウントから空振り三振に仕留めて一つのアウトを奪ったが、その後も苦しい投球は続いた。5番打者に初球をレフト前に運ばれて満塁。6番打者は見逃し三振に仕留めたが、7番打者には、みたび初球を狙われてライト前への適時打を浴びて勝ち越しを許す。なおも二死満塁から、8番打者に走者一掃となる右中間への三塁打を浴びるのだから、「まさかの展開」と言わざるを得ない。
初回に5失点。
先発マスクの吉田高彰が、草海のピッチングとともに悪夢の時間を振り返る。
「(草海は)本調子ではなかった。その中で、捕手としてもっと配球を考えるべきだった。単調になり過ぎてしまった……」
1失点ならまだしも、二死から大量失点になってしまったことを悔やむ。
2回表、一死から6番高島大輝が四球を選び、7番中川智裕の左中間スタンドに飛び込む2ラン本塁打で2点差に詰め寄るが、3回裏に2番手の舘和弥が3連打と犠飛で1点を失って点差を広げられる。4回表と6回表、ともに4番黒川貴章がレフト前ヒットで出塁するも無得点に終わるのだから、試合展開としては厳しい。6回裏に3番手で登板した伊波友和が先頭打者のセンター前ヒットを皮切りに1点を失い、4点差になってさらに状況が苦しくなる。
迎えた9回表。イニングの先頭となった5番高本康平がライトへ三塁打。相手の中継プレーが乱れる間に、一気にホームを陥れて3点差とする。6番高島がセンター前ヒット、さらに7番中川のセカンドゴロが相手の失策を誘い、無死一、二塁。一死後、途中出場の9番須田凌平がライト前ヒットを放って2点差。なおも一死二、三塁とチャンスは続き、1番北川のショートゴロの間に1点を加えて6点目を奪う。だが、最後は二死三塁で途中出場の2番片岡大和がレフトフライに倒れて試合は終わった。
西田監督は言うのだ。
「初回の失点がすべて。起こってはいけないことが起きてしまった」
最終回に1点差まで詰め寄って意地は見せたが、逆境を跳ね返して勝ち切る力はなかった。
「次の試合、やるしかない」
まさかの敗戦にも前を見据えた指揮官の言葉を信じたい。負ければ予選敗退が決まる次戦。大一番での勝利を信じるほかない。
文 : 佐々木 亨
写真:政川 慎治