戦評・コラム
第95回都市対抗野球大会 東京都二次予選 第三代表 1回戦 vs Honda
2024.05.24 [Fri] 13:00VS Honda
場所:大田スタジアム
託されたマウンドの重みはわかっている。そう言わんばかりに、先発の新人・尾﨑完太は立ち上がりから思い切り左腕を振った。1回表、先頭打者を力のあるボールでサードファウルフライに討ち取ると、後続を2者連続の空振り三振に仕留めて勢いをつけた。2回表も、左腕の唸るボールは変わらない。二死から死球を与えたが、7番打者を140キロ台中盤のストレートで追い込み、最後は変化球で空振り三振に仕留めるのだから上々の出来だ。
尾﨑の気持ちのこもったピッチングに攻撃陣が応えたのは2回裏。イニングの先頭となった5番高島大輝がフルカウントから左中間へ二塁打を放つ。一死から左翼線へ二塁打を放ったのは7番宮川和人だ。長打2本で1点を先制したところまでは、間違いなく主導権は三塁側にあった。
だが、なおも連続四球で一死満塁としながら、1番北川智也が見逃し三振、2番福森秀太がレフトフライに倒れて追加点を奪えなかった2回裏。さらに3回裏、3番植田匡哉が四球を選び、4番黒川貴章が死球で出塁して無死一、二塁としながら、5番高島が犠打失敗、そして6番須田凌平がサード併殺打に討ち取られて無得点。1点リードも拙攻が目立ち、重苦しい空気が流れた。
それまで無失点と粘り強く投げていた尾﨑が、Honda打線につかまったのは4回表だ。一死から6番打者にショートへの内野安打で出塁されると、7番打者にはレフトへ特大の2ラン本塁打を浴びて逆転を許す。2番手で登板した田中法彦が右前安打と左中間への二塁打で1点を失ったのは5回表。
6回表からは、3番手として荘司宏太がマウンドに上がる。「ストレートとチェンジアップがよかった」と振り返る左腕は、登板直後のイニングから8回表一死まで7者連続三振を奪い、チームに勇気を与えた。それでも、疲労が見えた4イニング目の9回表に先頭打者の四球を起点に2点を失う。
一方、4回以降の打線はHonda投手陣の前に沈黙。5回裏一死から2番福森が中前安打。6回裏は一死から6番須田が四球。7回裏には二死から2番福森が四球。走者は出すものの、後続がチャンスを広げることができずに無得点を続ける。得点圏にすら走者を進められない力のない攻撃に、三塁側は静まり返った。4点を追う9回裏も、途中出場の片岡大和がファーストゴロ、8番中川智裕が3球三振。そして、代打の高本康平がレフトフライに倒れる。
5年連続15回目となる本大会出場の可能性が消えた瞬間だった。
都市対抗野球大会の二次予選を未勝利で終えたのは、創部以来初のことだ。西田真二監督は言う。
「結果的にはフラストレーションがたまる大会になってしまった。今日の試合では、意地を見せてくれると思っていたが、序盤の攻撃がすべてでした。監督の采配が悪かったということですね」
言葉をつなぎ合わせて試合を振り返り、悔しさを滲ませた。主将の宮川は言う。
「悔しい……。正直、情けない。初戦で敗れてから、何とかしてチームを立て直さなければいけなかったのですが……。社員の方々やファンの方々、そして野球部の歴史を作ってきてくれた方々に対して、本当に申し訳ない気持ちです」
今大会の負けを選手一人一人がどう受け止めて前に進むか。再び歓喜の瞬間を迎えるためにも、そこが重要になってくる。
「都市対抗の二次予選で連敗した2024年の経験が活きた。そう言われるような力のあるチームになっていかなければいけない」
早過ぎた予選敗退を受け止め切れない表情を浮かべながら、そう語った宮川の姿が印象的だった。
文 : 佐々木 亨
写真:政川 慎治