戦評・コラム
第49回社会人野球日本選手権 関東代表決定戦 2回戦 vs 鷺宮製作所
2024.09.09 [Mon] 15:00VS 鷺宮製作所
場所:大田スタジアム
都市対抗野球大会は東京都二次予選で敗退。その悔しさは、秋のビッグイベントである社会人野球日本選手権大会に向けての原動力となっていたはずだ。
負けたくない、負けられない――。
本戦出場をかけた関東代表決定戦の1回戦は、夏の成果を示す大きなチャンスだった。
先発マウンドに立った草海光貴は、立ち上がりから気持ちのこもったピッチングを見せた。1回裏は先頭打者を空振り三振に仕留めるなど、3者凡退に抑える。2回裏は、四球を与えながらも、やはり無失点だ。3回裏は再び3者凡退に抑えるのだから上々の出来である。
攻撃陣は、何度もチャンスを築いた。2回表は、一死から5番宮川和人がセンターオーバーの二塁打を放ち、この試合初めて得点圏に走者を置いた。3回表は、イニングの先頭となった8番中川智裕が四球で出塁。9番神山福生が犠打を決めて一死二塁と攻めた。4回表には、5番宮川の四球を起点に、7番福森秀太のセンター前ヒットと相手の失策で二死一、三塁と絶好のチャンスを築く。いずれのイニングも得点につなげることができなかったが、相手にプレッシャーを与え続けた。
「勝ちたい」思いが結果として表れたのは、5回表だ。9番神山が三塁線へのセーフティバントを決めて出塁。1番北川智也のピッチャー前への犠打が相手の失策を誘い、無死一、二塁。2番片岡大和の2球目、相手バッテリーのミスでそれぞれ進塁して、無死二、三塁とビッグチャンスを築く。一死後、3番須田凌平のライトへの犠飛で1点を先制した。
直後の5回裏、草海が死球とレフト前ヒット、さらに犠打を決められて一死二、三塁と攻められると、そのピンチでマウンドに上がった2番手の荘司宏太が9番打者にスクイズを決められて同点。それでも、6回以降は荘司が無失点のイニングを積み重ねる中で、8回表に勝ち越しの1点を奪うのだから、勝利への思いは相手を上回っていただろうか。イニングの先頭となった4番高島大輝がセンター前ヒット。犠打で得点圏に進んだ高島は、果敢に三塁盗塁を狙って成功する。一死一、三塁で、代打の黒川貴章がショートへの強襲ヒットを放ち、三塁走者の高島がホームを踏んだところまでは、勝利の風は確かに吹いていた。
その流れに乗って、荘司は8回裏のマウンドも丁寧にアウトカウントを積み重ねた。先頭打者をセンターフライに討ち取り、1番打者は空振り三振に仕留めて2アウト。だが、そこから2者連続で四球を与え、4番打者にはレフト線への二塁打を浴びて同点とされる。なおも二死二、三塁から、代わった舘和弥が5番打者をショートゴロに討ち取るも、遊撃手の中川が一塁へ痛恨の送球ミス。2点タイムリーエラーとなり、点差は2点に広がった。
この試合初めて追いかける展開となった9回表は、1番北川がファーストゴロに倒れる。代打の吉田高彰が四球を選んで出塁するも、3番須田はセカンドフライ、そして4番高島は空振り三振に倒れて敗戦を迎える。
試合後の西田真二監督が言葉を絞り出す。
「勝負所で力を発揮できなかった。守り切れなかった。僅差のゲームを勝ち切る逞しさが欲しい。今年を象徴するような試合になってしまった……」
主将の宮川は「とにかく、悔しい……」と言い、チームの未来をこう語る。
「チームとして、または選手個々が意識を変えていかなければいけない。今日の負けをどうとらえて、どう感じるか。そして、選手一人一人が野球とどう向き合っていくか。変えなければいけないこと、変わっていかなければいけないことは、この試合を通じて改めて見えたと思う」
予選敗退を受け、今シーズンのチームは社会人野球の二大大会の本戦出場を逃すこととなった。突きつけられた現実は厳しい。それでも、今は我慢強く、現実を真摯に受け止めてその歩を前へ進めるしかない。
文 : 佐々木 亨