Focus

Focus4｜サステナビリティ対談未来を拓く小学生の夢を応援：手洗いロボットで社会課題解決へ

子どもたちの未来のために、できることをはじめよう
玩具開発のエキスパートたちが、手洗いロボットにかける小学生の夢を全力で応援

（左）
宮崎奈緒子
株式会社セガトイズ　代表取締役社長

（中央）
一木裕佳
セガサミーホールディングス株式会社　執行役員　サステナビリティ本部長

（右）
手洗いロボット「シャル君」発案者
根木絢未さん
学校法人玉川学園　国際バカロレア(IB)クラス6年
※取材当時（2023年2月）

手洗いロボット「シャル君」は、根木絢未さんが発案した、「正しい手洗いを身に付けるためにアシストしてくれるロボット」です。根木さんはシャル君を作り始めてから、夢が大きく膨らんで、夢の実現を目指し具体的な可能性を探るため、たくさんの企業のドアをたたき続けたのだそうです。そのアイデアは、東京証券取引所・東証Arrowsで開催された小中学生による国内最大規模の社会課題解決プレゼンテーション大会「第3回スタートアップJr.アワード2021」で大賞グランプリを受賞しました※1。セガサミーホールディングスおよびセガトイズは、「シャル君を通して世界中に正しい手洗いを広げ、一人でも多くの人が健康な生活を送れるようにしたい」という根木さんの熱意に共感し、「世界中のどんな環境下でも通用する、本格的なプロ仕様のシャル君の試作機」を製作するプロジェクトを2022年5月にスタートさせました。

このたび、念願の試作機が完成し、2023年2月に根木さんへの譲渡式が行われました。それに伴い、根木さんとセガトイズの宮崎社長、セガサミーホールディングスの一木執行役員の対談が実現。このプロジェクトに込めた思いと、今後の夢について語り合いました。

※1：国内トップレベルの小中学生プレゼンターが東京証券取引所に集結！アイデアとビジョンに尾木ママも絶賛！「スタートアップJrアワード2021」決勝大会、盛況のうちに閉会
（株式会社Values Fusion プレスリリース）

みんなが楽しく、正しい手洗いをするお手伝いをしてくれるロボット「シャル君」の誕生

一木

根木さんは、どうして手洗いロボット「シャル君」を作ろうと思ったのですか？

根木

シャル君を思い付いたのは、4年生のときでした。新型コロナウイルス感染予防のために学校で「正しい手洗い」の指導があったけれど、教わった通りにやっていないお友達もいたんです。それで、みんなが楽しく、正しい手洗いをするお手伝いをしてくれるロボットがあったら、きっといいなと思ってもらえるんじゃないかと考えました。

その頃、私が通っているプログラミング教室で「コロナを撃退するロボット」のアイデアコンテストがあったので、手洗いロボットのアイデアを応募しました。それを見たお母さんが「こんなロボットがあったら絶対欲しい！」と言ってくれて、商品化したいと思うようになりました。

一木

シャル君のデザインはご自分で考えたのですか？

根木

「ロボットってこんな感じだろう」とイメージして、デザインしました。プロトタイプは、ロボット製作キットで作りました。その次は本体を3Dプリンターで作って、それを動かすためのプログラムはプログラミング教室の先生に手伝ってもらいました。

一木

アイデアをご自分でデザインに落として、3Dプリンターとかプログラミングでどんどん進化させていくとは、本当にすごいですね。「世界中の人を健康に」というコンセプトは、最初から決めていましたか？

根木

実は、最初はそういった社会課題の解決につながるとは全然知らなくて、ただワクワクした気持ちで作っていました。でも、学校でSDGsフェスティバルがあったので、出展しようと思って調べていくうちに、正しい手洗いとSDGsは関係しているって気が付いたんです。そこで初めて、「手洗いロボットで世界の子どもたちを救いたい」という夢ができました。

シャル君に「Wow!」を感じて、試作機製作プロジェクトがスタート

一木

宮崎さんは、お子様がメインターゲットである会社の代表として、この企画をどのように捉えましたか？

宮崎

最初は、セガトイズのベテラン社員から根木さんの話を聞きました。「とてもおもしろい子がいて、ロボットの企画を持ってきた。どうにかして応援したい」と言うので、「ベテラン社員をそんな気持ちにさせるのはどんな子だろう？」と興味を持ったんです。

実際にシャル君の企画を見せてもらったら、コンセプトもアイデアも素晴らしく、「Wow!」を感じました。セガトイズは、ミッションとして掲げている「Create Wow! And Smile! (世界の人々に驚きと笑顔を！）」をとても大切にしています。「Wow!」という驚きや感動の次に、笑顔になっていく”感情の動き”を生み出せるかということを常に意識して企画を見ているんです。シャル君の企画を聞いたときには、まさに「Wow!」の後に笑顔になりました。日本国内だけでなくグローバルな視点で企画が練られていることや、根木さんの熱意にも「Wow!」を感じましたね。

一木

このお話についてご相談をいただいたとき、セガサミーホールディングスサステナビリティ本部としては「セガサミーグループが応援する理由や、共感できるストーリーがあるだろうか？」と考える必要がありました。そこで、根木さんに会ってお話ししたのですが、最初は衝撃を受けました。「こんなに志が高くて、行動力があって、説得力のある企画を作って、情熱的に企業に支援を訴えかける小学生がいるなんて！」と。

私はすっかり心を打たれて、「なんとか応援できないだろうか」と考えました。そして、さまざまな部署の担当者や関係者の方々と相談や交渉を重ね、プロ仕様の試作機開発のプロジェクトをスタートさせました。「玩具といえば」ということでセガトイズにお願いして、ものづくりのエキスパートに伴走してもらえたからこそ、企業のコアコンピタンスを生かした本当に素晴らしいプロジェクトとなりました。

関わる全員が本気で取り組み、多くの苦労を乗り越えて、ついに試作機が完成

一木

根木さん、セガサミーホールディングスやセガトイズと協働することが決まったときは、どんな気持ちでしたか？

根木

シャル君を作り始めてから、幼稚園でモニターをしてもらったり、コンテストに出たりしたけれど、夢を叶えるために協力してくれる会社はなかなか見つからなかったんです。でも、私の性格として、諦めたら気持ちが悪い。だから諦めませんでした。1年半くらいたって、「第3回スタートアップJr.アワード2021」で大賞グランプリを受賞したことがきっかけで、セガサミーホールディングスさんやセガトイズさんと出会いました。協力すると言ってもらえたときは嬉しかったです。

一木

セガトイズの社員と一緒に、夢中になって開発に取り組んでいましたよね。色やサウンド選びで何時間も打ち合わせをしていたりして、その集中力にビックリしたこともありました。栃木の玩具工場まで行かれたり、とても楽しんでシャル君の進化に寄り添っていましたね。

根木

試作機のプロジェクトがスタートしてからは、ずっとワクワクしていました。社員さんと直接会って打ち合わせしたり、WEB会議をしたり、メールでも何回もやり取りしました。打ち合わせのときは、皆さんが温かい雰囲気だったので緊張がほぐれて、いろいろなことをお話しするのが楽しかったです。作る過程にも参加させてもらって、「こういう風にして作っていくんだな、すごいな」と思いました。

お母様

「シャル君を作りたい」ということになってから、いくつかの企業に企画を持ち込みましたが、企業とつながることの難しさを痛感するばかりでした。あっさり断られて何も言葉が出てこなかったことや、資料を受け取ってもらうことすらできずに親子で号泣したことなど、苦しい思いもたくさんしてきました。ですから、セガサミーホールディングスさんやセガトイズさんが娘の真剣さを理解して、手を差し伸べてくださったときは嬉しくて二人で泣きました。

プロジェクトが始まってからも、いつも順調だったわけではありません。「もうダメかな、完成せずに終わってしまうのかな」と思ったときもありました。でも、セガトイズさんは決して見捨てなかった。プロジェクトがうまくいかないときに、技術者の方が「どうすればいいか、僕が考えるから。最後までやりましょう」と励ましてくれたんです。一貫して、協働する姿勢を変えずに、試作機の完成まで付き合ってくれました。本当に感謝しています。

試作機として出来上がったシャル君

・胸のハートにセンサーがあって、手をかざすと、正しい手洗いに必要な長さの音楽が流れる。
音楽に合わせて、シャル君と一緒に正しい手洗いができる。

・子どもたちが飽きずに長く使えるように、音楽はランダムで流れる。
さらに、途中で応援の掛け声が流れ、手洗いが終わったら褒めてくれる。

・電気のない国でも使えるように、ソーラーパネルを搭載。

・手洗いロボットなので、水回りで使える耐久性を備えている。

夢を諦めずに、行動することが大事！社員の心に火が付いた

一木

宮崎さんは、部署やグループ企業の垣根を超えた連携で実現したこの企画について、グループ社員にどのように受け止めて欲しいとお考えでしょうか？

宮崎

今回のプロジェクトには、セガサミーホールディングスとセガトイズとの両社で、さまざまな部署から約30人のメンバーが関わっています。セガトイズのベテラン社員に感想を聞いたら、「『玩具が好きだから、玩具で人々に感動体験を与えたい』という初心を思い出して、元気付けられた」と言っていました。根木さんが社員の心に火を付けてくださったことに、とても感謝しています。

私が日頃から社員に伝えたいと思っていたことが、根木さんとの出会いと、シャル君の試作機製作を通して、さらにはっきりと見えました。「夢を諦めないこと」と「行動すること」です。夢を持っている人は多いと思いますが、それだけでは実現しない。いかにして、夢に向かって真っすぐに行動していくかが大事だということを、社員に伝えたいですね。

一木

セガサミーホールディングスサステナビリティ本部のキーワードは「共感」です。今回のプロジェクトは、「ロボットを通じて社会課題を解決したい」という根木さんの活動に対して、「感動体験を創造し続ける。～社会をもっと元気にカラフルに～」というグループミッションを掲げる我々が共感したからこそスタートできました。社員やステークホルダーの皆様からも「これはいい！セガサミーらしい取り組みだね」と共感していただけるのではないかと思っています。

一人でも多くの人が健康な生活を送れるように、シャル君を広めたい

根木

セガサミーホールディングスさん、セガトイズさんの協力で、ついにシャル君の試作機が完成して、今日対面することが出来るのが楽しみで嬉しくて、早く会いたくて本当に待ち遠しかったです。実は色紙に心をこめてお礼のメッセージを書いてきました。

宮崎

ありがとうございます！すごく上手ですね。

一木

とても素敵な色紙ですね。そして字がきれいですね！根木さん、シャル君と一緒に叶えたい次の夢は何ですか？

根木

これからは、シャル君を通じて、日本にも海外にも正しい手洗いを広めていきたいです。そのために、3月には「TEDxOgikubo2023」にスピーカーとして出場するとか※2、きっかけ作りは続けます。世界では安全な水を使えない人もまだ多いので、将来は給水器を設置するための募金活動もしたいと思っています。

※2：セガトイズが作ったシャル君と一緒に満を持してTEDに登壇です。（「TEDxOgikubo2023」ホームページ）

宮崎

根木さんは小学生のうちから社会課題を解決することを考えていて、それが夢だというところがすごいですね。今後の活動も楽しみです。応援しています。

一木

根木さんの活動は、これからさらにワールドワイドに広がっていくと思います。根木さんの思いをより具体的に伝えて、たくさんの人の心を動かすための大切な相棒、ツールとして、今回のプロ仕様の試作機を提供することができました。今後の活動を見守りつつ、次はどのように応援していくことができるのか、引き続き考えてまいります。

未来を拓いていくために、今後もさまざまな夢や活動を支援したい

一木

宮崎さんは、お子様をはじめとするステークホルダーの皆様に対して、今後どのような取り組みを行っていきたいとお考えですか？

宮崎

今回のプロジェクトは、シャル君のコンセプトやアイデアが「Create Wow! And Smile!」というセガトイズのミッションにつながるものだと、感銘を受けて始まりました。セガトイズは主にお子様をターゲットにしている会社ですから、「たった一人の子の夢も叶えられなくてどうする！」という気持ちがあったんですね。だから、全力で根木さんを応援しました。

いろいろなところに目を向ければ、我々がまだ見たことのないような「Wow!」を感じられるアイデアがあることを再確認できました。これをきっかけに、今後もセガトイズのミッション実現のため、さまざまな取り組みを行っていきたいです。

一木

根木さんという一人のお子様のアイデアを、ロボットという形で実現させるプロジェクトは、セガトイズにぴったりでしたね。そこに多くの社員が参加して、セガトイズの技術力を結集し、すごい試作機を完成させられたことは大きな成果だと感じています。

セガサミーグループとしては、グループ社員の皆さんが社会課題を「自分ゴト」として捉え、事業活動を通じて社会課題を解決し、世の中をもっともっと良い方向に変えていきたい、という強い思いがベースにあります。エンタテインメントの力で未来がもっと素敵になるように、たくさんの人が幸せになるように、いろいろなチャレンジを続けていきたいと思っています。今回のプロジェクトは、そういったセガサミーグループの姿勢を伝えることができる、素晴らしい取り組みになったのではないでしょうか。私たち自身がそのような思いで行動をし続けるだけでなく、未来を拓いていく世代の人たちの夢や活動も積極的に応援したいと考えています。そんな志のある方々と思いを重ねて、社会課題解決に向けて、一緒に楽しみながらアクションしていきたいと思います。

Focus4｜サステナビリティ対談 未来を拓く小学生の夢を応援：手洗いロボットで社会課題解決へ