Focus
Focus6 | フェニックス・シーガイア・リゾートの食品ロス削減対策
食材を余すところなく使い、お客様にもスタッフにも”感動体験”を
パインテラスの料理長が熱意を持って先導する食品ロス削減対策
インタビュー ※取材時期:2023年10月
(左)
斎賀 雄大
フェニックスリゾート株式会社 ホテル事業本部 シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート 調理部
パインテラス 料理長
(右)
吉岡 陽子
フェニックスリゾート株式会社 ホテル事業本部 シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート 調理部
パインテラス 朝食担当リーダー
岩切 美恵子
フェニックスリゾート株式会社 執行役員 ホテル事業本部 副本部長
兼 シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート 総支配人
セガサミーグループは、エンタテインメントコンテンツ事業、遊技機事業、リゾート事業を軸に、世界中のあらゆる人に感動体験を提供し続けています。中でも、日常にはない「感動体験の場」を創造するのがリゾート事業です。
主要施設の一つであるフェニックス・シーガイア・リゾートが目指すのは、「日本でいちばん”美味しい”リゾート」。”美味しい”の追求は、見た目や味だけにとどまりません。「ひとも地球も、元気にするリゾートへ」というフェニックス・シーガイア・リゾート独自のサステナビリティビジョンを策定するとともに、サステナビリティの専門部隊としてサステナブル推進課を設立し、安全性の確保、環境への配慮、地域への貢献など、自分たちにしかできないサステナビリティ活動を日々考え、実践し、発信しています。今回はサステナビリティへの取り組みを通して、お客様の感動体験の裏側にある社員の奮闘や、そこに込められた思いに迫ります。
フェニックス・シーガイア・リゾート
所在地 : 宮崎県宮崎市山崎町浜山
施 設 : ホテル、国際コンベンションセンター、温泉、ゴルフコースなど
1994年に全面開業したリゾート施設。2012年にセガサミーにグループイン。
2017年10月には開業以来最大規模となるリニューアルが完了し、美しく雄大なロケーションと、それをお楽しみいただくための空間演出、そしておもてなし。全てにおいてこれまでにない、そして宮崎・シーガイアでしか味わえない“体験価値”がそろう『新しいシーガイア』へと進化。ブランドスローガン「日本でいちばん“美味しい”リゾートへ」のもと、“食の宝庫 宮崎”のリゾートとして、新しい食の体験を創出し続けている。
2023年4月には、G7宮崎農業大臣会合の一連の行事のほとんどをPSRで開催。G7の高度な要望にお応えしたことで、「食材の美味しさに感動し、食の宝庫を感じることができた」と各国大臣からも高い評価を受けた。
フェニックス・シーガイア・リゾートで活躍する料理人の思い
パインテラスにおける食品ロス削減への取り組み
フェニックス・シーガイア・リゾートは、マテリアリティ(重要課題)として「製品/サービス」、「人」、「環境」の3つを掲げています。そのうち、「製品/サービス」における目標の一つとして、食品ロスの削減を定めました。
今回は、“宮崎テロワール”(宮崎の土地が育んだ地元食材の美味しさ)をテーマにしているビュッフェスタイルのレストラン、ガーデンビュッフェ「パインテラス」の取り組みから、主要な2つをご紹介します。パインテラスでは、料理人たちが食品ロス削減のために自ら考え、行動しています。
1つ目の取り組みは、営業形態の変更です。パインテラスでは2020年から、ホテルに宿泊したお客様にゆっくり食事をお楽しみいただけるように、朝食と昼食を兼ねた「ブランチ」としての通し営業を始めました。以前は朝食と昼食の営業時間ごとに、ビュッフェラインに並べた料理を全て入れ替えていましたが、通し営業にしたことに合わせ、ビュッフェラインの料理を少しずつ変えていく方式に変更。結果的に、食品ロスの削減につなげることができました。
2つ目は、ビュッフェラインに並べる前と後の両面から食品ロスを減らす取り組みです。ビュッフェラインに並ぶ前の食品は、さまざまな料理に応用することができます。しかし、料理人が工夫を重ねても、どうしてもロスになってしまう食品があります。例えば、お客様に提供しないレタスの端材や、ビュッフェラインに並べられずに余ったパンです。こうした食品を廃棄せずに有効活用する方法を考え、近隣施設の「宮崎市フェニックス自然動物園」で飼育している動物の食事として使ってもらう活動を行っています。
一方で、ビュッフェラインに並べた後の食品は、残れば廃棄になってしまいます。オープンキッチン形式のパインテラスでは、出来立ての料理を提供することを料理人の一人一人が意識し、作り過ぎを抑制することで、廃棄を減らす努力をしています。
「この人と一緒なら頑張れる」とスタッフが信頼を寄せる料理長
パインテラスで食品ロス削減の取り組みを先導しているのは、30代の若さで料理長に抜擢された斎賀です。料理長として、どのような思いで仕事に取り組んでいるのか聞きました。
斎賀
いつも念頭に置いているのは、「スタッフに気を遣うことができなければ、お客様に対しても気を遣えない」ということです。パインテラスには、調理場とホールを合わせて50〜60名ほどのスタッフがいますが、毎日なるべく全員と話すことを目標にしています。その中で伝えているのが、「自分たちが面倒だと思うことは、お客様に喜んでもらえること」です。手間暇をかければかけるほど、お客様の感動体験につながる、という意味です。それを教えてくれたのは、パインテラスを支えてきた先輩方。彼らから教わったことを、今度は自分がスタッフに伝えていきたい。言うだけではなくて、自分がまず実践しなくてはいけないとも考えています。
パインテラスの調理場をよく知るスタッフの吉岡は、斎賀が料理長になって雰囲気が変わったと語ります。
吉岡
コミュニケーションがとても活発になったと感じています。斎賀料理長は忙しい中でもスタッフ一人一人を気にかけて、話しかけてくれますし、スタッフの話もいろいろと聞いてくれます。「パインテラスをもっとよくしたい」という熱意にあふれていて、率先して行動するから、みんなが「一緒に頑張っていきたい」と思うんでしょうね。今は、スタッフが料理長に対してどんどん意見を言うようになりました。
スタッフとのコミュニケーションを重視している斎賀に、食品ロスについてはどのように意識しているのか聞きました。
斎賀
宮崎は食の宝庫です。地元の美味しい食材を取り入れて料理を作っていると、食材のありがたみを感じられます。生産者さんとの関係ができると、「食材を余すことなく使い、宮崎の魅力を伝えるのが使命」だと考えるようになりました。それを、食材の調達をしてくださっている購買部やスタッフに伝えて、どうしたらロスを減らせるかを一緒に考えながら行動しています。そうしているうちに、スタッフにも「食品ロスを出したらもったいない」という意識が根付きました。生産者さんをお呼びして食材のことを教えていただく社員向けの勉強会には、パインテラスからも毎回多数のスタッフが参加しています。
動物園との連携で食品ロスを減らす! スタッフの細かい手作業で実現
パインテラスにおける食品ロス削減の取り組みは、試行錯誤と努力の連続です。例えば、お客様に提供されないレタスの端材やパンを「宮崎市フェニックス自然動物園」で動物の食事として使ってもらう活動は、ずっと前にも行われていました。それを知った斎賀がサステナブル推進課に相談して復活させようとしたところ、細かい条件があることがわかったのです。その理由は、動物に与えるためにはレタスの芯を取り除いたり、動物が食べられるパンとそうでないパンを選別したりしなければならないからでした。スタッフからは「今まで廃棄していた食品にひと手間加えなければならないのでは」と困惑する声もありましたが、斎賀が「手間が増えるわけではなく、今までより細かく分別するだけ。まずはやってみよう!」と説得したことで実現しました。
動物園との取り組みを担当している吉岡は、新たな感動が生まれたと語ります。
吉岡
大変だと思ったこともありましたが、私たちが提供した食品を動物が実際に食べているところを写真で見たら、食べてもらえてうれしく、ありがたいという気持ちが湧いてきました。食品が無駄にならないので、生産者さんも喜んでくださるはず。実現してよかったと思います。
斎賀
せっかく再開した動物園への食品提供を、鳥インフルエンザの影響で一時中断したことがあります。そのときにスタッフからは、「捨ててしまうのはもったいない」、「いつ再開できるのか」という声が上がりました。活動の意義がスタッフに浸透したのだと感じて、うれしかったです。
会話がお客様の満足につながる。料理長の背中を見てスタッフの意識が変わった
斎賀は、食品ロスを減らすための最大の対策は「料理を作り過ぎないこと」だと話します。
斎賀
以前は、朝食として提供する量を予測して作っておいて、少しずつビュッフェラインに並べる方式でした。その方がスタッフの手間は少ないのですが、料理の美味しさは時間とともに失われていきます。だったら、そのとき必要な分だけを作る方がいいと、思い切って方式を変えました。
例えば、お客様の目の前で作るオムレツは、出来立ての状態で食べていただくために「1回に2個まで」とお願いしています。取り置きするよりも、食べたいときに取りに来ていただく方が、常に最高の状態で提供できます。食品ロスを減らせますし、お客様とのコミュニケーションも生まれます。「美味しかったから、また取りに来た」と言っていただけるのなら、料理人にとって、これほどうれしいことはありません。
斎賀は、料理人自らがお客様に料理の魅力を伝えることが重要だと語ります。
斎賀
オープンキッチンではお客様との距離が近いので、丹精込めて作られた地元食材のストーリーや、それを使った料理の美味しさをお客様に話すようにしています。料理を作って出したら終わりではなく、どういう料理なのか自分の言葉で伝えることで、お客様にもより一層満足していただけます。じっくりお客様と会話しながら料理を提供できるようにするには人手が必要ですが、それなら料理人を増やせばいい。コストは増えますが、長い目で見て、もっと多くのお客様に感動していただき、また来ていただけるようにすることこそが大事だと考えています。
斎賀がオープンキッチンでお客様と積極的にコミュニケーションをとる姿を見せたことで、スタッフも少しずつ変わっていきました。「料理人が表に立ってお客様に伝えることが大切」という意識が根付いたのです。
 
スタッフの意識改革を成し遂げた斎賀ですが、本人は気負わず、常に自然体でスタッフと接しています。
斎賀
スタッフに「お客様とコミュニケーションするためのスキルを磨きなさい」とは言っていません。パインテラスにはいろいろな経験を積んできたスタッフがいるので、スタッフ同士の相乗効果でスキルアップしてくれています。料理長の役目は、スタッフ一人一人と会話して、強みを見極めて、適材適所の配置をすることだと思っています。
料理人が考える、未来のパインテラスの理想像
今後、パインテラスで食品ロス削減のためにどのような挑戦をしてみたいか聞きました。
吉岡
ビュッフェは料理を陳列しておくのが一般的なスタイルですが、並べられた料理は乾いたり冷めたりするのが課題です。料理を陳列せずに、お客様のオーダーを受けてから作るオーダービュッフェの形式に変えられたら、食品ロスはさらに減らせると考えています。
斎賀
そうですね。サラダなどはこれまで通りに陳列する形式にするとしても、このように席数の多いパインテラスでメイン料理をオーダー制にすることを実現できたら、まさに日本一のビュッフェレストランになると思います。
吉岡も斎賀も、今よりもっと進化したパインテラスの姿を思い描いています。オーダービュッフェを実現するためには、何が必要なのでしょうか。
斎賀
最も大切なのは、やはりスタッフの意識です。食材のありがたみを理解し、余すところなく調理して、お客様に提供する。そして、食材や料理の良さをお客様に言葉でも伝える。全ての料理人がそれをできるようになるのが、レストランとしての理想の姿だと考えています。そうした意識を持つ人材を育成していけば、オーダービュッフェも実現できるはずです。
困難を恐れず、理想を目指して挑戦し続けようとする斎賀。厳しいだけでなく、スタッフに「みんなで楽しくやっていこうよ!」と声をかける気遣いも忘れません。
斎賀
パインテラスは忙しいですが、楽しい職場です。いろいろな料理人にパインテラスに来てほしいですね。
斎賀は今後もパインテラスの先頭に立って、食品ロス削減をはじめとしたさまざまな取り組みを進めていくことでしょう。
料理人の奮闘を支える責任者の思い
料理人を信じて任せたことで、食品ロス削減の取り組みが前進した
シェラトン・グランデ・オーシャンリゾートには複数のレストランがあり、斎賀はその中で最年少の料理長です。総支配人である岩切が斎賀に食品ロス削減の取り組みを任せたのには、どのような意図があったのか聞きました。
岩切
斎賀には、若さを生かして、パインテラスに勢いを出してもらいたいと思っていましたし、雰囲気が変わってうまくいっていることを感じています。
食品ロス削減の取り組みに関しては、現場の料理人に任せるのが最もスピーディーだと考えています。斎賀は何にでもチャレンジして、できるまでやろうとする気概がある料理人なので、やりたいことにチャレンジしてくださいと言いました。お互いを信じて任せる、任されるという関係は構築できていると思っています。
社員の様子を知るために、日々、ホテル内を巡回している岩切。パインテラスの料理人とは、どのようにコミュニケーションをとっているのでしょうか。
岩切
斎賀だけでなく、スタッフからも直接報告を受けます。その中で、サステナビリティの活動に繋がりそうな報告があればアドバイスすることもあります。一見すると関係なさそうなことでも、深く考えてみれば、サステナビリティにつながるかもしれない。そういった気付きを見出してもらいたいと思っています。
パインテラスで進んでいる食品ロス削減の取り組みについて、総支配人としてどのように見ているのか聞きました。
岩切
斎賀が料理長になって、調理場の中から「食材をもっと大切にしよう」という行動が起こりました。フェニックス・シーガイア・リゾートが「日本でいちばん”美味しい”リゾート」になることを常に意識し、一つ一つの取り組みに丁寧に向き合い、命を繋ぐことの大切さをしっかり考えるようになったのだと思います。パインテラスの料理人たちには食品ロス削減への責任感があるので、取り組みを任せることに不安はありません。
パインテラスの料理人たちがアイデアを出し、食品ロス削減の活動を積み重ねてきたことで、購買部などの関連部署も今まで以上にサステナビリティを意識するようになりました。サステナビリティを軸に部署間の連携ができていて、日々の積み重ねが良い形でアウトプットできていると考えています。
今後はレストラン同士の連携で、食品ロスの削減をさらに進めたい
これからの食品ロス削減の取り組みについて、料理人に期待していることを聞きました。
岩切
動物園への食品提供など、パインテラスで現在行っている取り組みはぜひ続けてほしいと思っています。もちろん、食品ロス削減に取り組んでいるのはパインテラスだけではありません。それぞれのレストランが努力を重ねています。レストラン同士が横で繋がる形を確立すれば、食材の無駄をなくし、さらに食品ロスを減らす仕組みを作れるはずです。
私は総支配人として、物事を進める判断基準を「それを実施することで、誰か幸せになる人がいる」という点に置いており、常に自分以外の人を幸せにすることが役目だと思っています。大切なのは、数値で結果を出すことよりも、お客様に幸せになっていただくこと。食品ロス削減の取り組みも、お客様に安全・安心なものを提供することがスタートラインです。その芯はぶれないようにして、これからも料理人と協力しながら、取り組みを推進していきたいと考えています。
料理人たちが自ら考えてサステナビリティに取り組んでいることについて、フェニックスリゾート株式会社 代表取締役 社長執行役員の片桐は以下の通りコメントしています。
私たちのリゾートは、日向灘の温暖で雄大な太平洋に沿って広がる、緑豊かで広大な黒松林に囲まれた、美しく恵まれた環境の中にあります。
そして、その中でのリゾートステイをお楽しみいただき、お客様に元気になっていただくことが私たちの使命です。
当社の料理人は、私たちの使命を果たすために、安全・安心な食の提供はもちろんのこと、「日本でいちばん”美味しい”リゾート」へ向け、非日常を感じられる「食✕体験」(感動体験)を創造してくれています。
お客様にさらなる感動体験を提供するセガサミーグループ
フェニックス・シーガイア・リゾートには、「日本でいちばん”美味しい”リゾート」を目指す道のりの中で、「食」を通してお客様に感動を届けることを考え、サステナビリティに誠実に取り組む社員たちがいることをご紹介しました。
食の宝庫と呼ばれる宮崎の豊かな環境の中で、生産者さんと食材に真剣に向き合う料理人たち。そんな料理人たちを信頼して支える責任者たち。さらに、サステナブル推進課や購買部といったさまざまな部署の社員たち。一人一人が、自分に何ができるかを考え、アイデアを出し合いながら丁寧に対応していることが、「日本でいちばん”美味しい”リゾート」を実現するための原動力となっています。
フェニックス・シーガイア・リゾートのサステナビリティへの取り組みは、「人生は喜怒哀楽に溢れている そんな人々の生活に彩り豊かな感動体験を添える」というセガサミーグループのサステナビリティビジョンへと繋がるものです。セガサミーグループはこれからも、お客様にさらなる感動体験を提供したいと考えています。そのために、リゾート事業だけでなく、エンタテインメントコンテンツ事業、遊技機事業を含め、グループ全体として引き続きサステナビリティを推進してまいります。