ガバナンス
社外取締役メッセージ
当グループは、非常に誠実で、高い責任感があり、
目標に向かって努力できる集団であると
私は強く感じています

ガバナンス体制に対する評価
私はこれまで、主にリスク管理や危機管理、コンプライアンス関連のコンサルティングに長く携わってきました。また、それ以前は警察庁に身を置いており、そうした経験からリスク管理全般を専門分野として、規制リスクや地政学リスクなどにも常にアンテナを張っています。当社ではそういったリスク管理を中心に、また、女性ということもありダイバーシティの観点も大切にしながら、提言・助言を行っています。
当社の経営については、社外取締役が納得いくまで議論できる環境が整備されている点は高く評価しており、そのための機関として取締役会の下にグループ経営委員会を設けていることは特筆すべき点です。当委員会では、取締役会に上程する前段階の議案に関して、時間をかけて徹底的に議論・検証しています。この委員会で十分な議論がなされているため、取締役会は決議の場という位置づけが明確になり、経営の意思決定がスムーズに行われています。
2022年秋には取締役と執行役員が参加する経営合宿が開催されました。寝食をともにし、長時間にわたり広範なテーマに関する議論を重ねたことで、普段の取締役会ではなかなか感じることのできない各役員の哲学やパーソナリティに触れることができ、非常に有意義なイベントでした。取締役同士のチームワークも向上したことで、社外取締役の持つ多様な経験・知見を発揮できる場がさらに強化されたと感じています。
一方で、今後の課題として感じていることは、リスクマネジメントの議論の深化です。
2022年に、グループガバナンス本部を立ち上げたほか、グループ経営委員会内にグループリスク・コンプライアンス分科会を設置したことで、現場からリスクに関する詳細な情報やデータを吸い上げ、経営層が検証できるようになりました。しかし、こうしたリスク管理の枠組みは整いつつあるものの、どうしてもすでに顕在化しているリスクについての議論になりがちで、潜在リスクに関する議論が後回しになっている点は、さらに改善が必要と感じています。今後、当グループが事業を拡大していく過程においては、これまでにない様々なリスクが発生する可能性があります。こうした将来の潜在リスクに対する棚卸しと分析は不可欠と考えています。潜在リスクに関する業への影響度を把握しておけば、いざリスクに直面した際にも、冷静に対応することができますし、リスクを把握していれば適切にリスクをテイクし、成長につなげることもできます。
また、グループガバナンスに関してもさらなる強化を期待しています。当グループは近年急速にグローバル化を進めており、現在多くの海外子会社を保有しています。この状況の中で、今後海外でさらに飛躍するためには、本社とのつながりを強化し、グループ会社全体の価値観を一つにしていかねばなりません。そのためには、本社の戦略、方針をしっかり理解してもらえるよう、日本と現地とのコミュニケーションの機会をもっと増やしていくべきだと思います。さらに、守りの部分では、海外子会社の監査体制も重要となります。言語、商習慣、法制度が異なる海外子会社を確実に監査していくことは容易ではありませんが、まずはグローバル監査できる人財をしっかり育成していくことが重要です。海外に限らず、監査の経験は企業経営において有効なスキルですので、幹部候補生の登竜門として、どんどん挑戦させていってもよいと思います。
私が当社の経営に参画し、2年が経過しましたが、その中でも、ガバナンスの強化は年々進展しています。変化を恐れることなく、進化できることは、当社の大きな特長ですので、引き続きこうした課題にも迅速に対応していき、より高度なガバナンス体制の構築を目指していくことを期待しています。
企業価値を向上させるサステナビリティ活動に期待
2022年にグループサステナビリティ分科会が設置されたことにより、マテリアリティに関する取り組み状況とKPIの進捗が役員に共有され、十分な議論ができる機会ができ、当社のサステナビリティ・ガバナンスは、驚くべきスピードで向上しています。今後の課題としては、現在取り組んでいるサステナビリティ活動と、経営戦略との関連性を可視化し、当グループの長期的かつ持続的な企業価値の向上につなげていくことです。ここがクリアになれば、株主・投資家の皆様からサステナビリティ活動に対する信頼をさらに得ることもできますし、社員も納得感を持って活動に打ち込めると思います。
また、女性活躍の推進に向けた働きやすい環境整備は、当グループにとってますます重要性が増してくると考えます。当グループの事業分野においても、潜在顧客の半分は女性であり、女性が感動するような製品・サービスを提供できるか否かは、成長に大きく関わってきます。女性の価値観や感じ方は、やはり同じ女性のほうが気づく点が多いと思っており、女性社員ならではの視点をいかに事業活動に活かしていくかは大きなポイントとなります。そして、当社のグループミッションは「感動体験を創造し続ける」ですが、ミッション実現のためには社員が生き生きと働ける環境が重要であると考えています。女性社員が働きやすい職場を整備するということは、男性社員にとっても育児休暇の取得しやすさなどにつながり、男女ともに大きなメリットになると思っています。実際、こうした職場環境の整備を含む人事施策は、スピード感を持って取り組んでおり、役員クラスのコミットメントも高いので、引き続き重点的に取り組みを進めていってほしいと思います。
当グループの将来に大きな期待を持っている
中期計画の進捗は当グループの社員全員の努力が結実し、とても順調に推移しています。ただし、当グループの成長ポテンシャルはまだまだこの程度ではありませんので、手綱を緩めることなく、課題を一つずつクリアしていき、突き進んでいってほしいと思います。
海外展開が軌道に乗り始めているエンタテインメントコンテンツ事業では、当グループをけん引するような新たなグローバルIPがいよいよ生まれることを期待していますし、それを後押しできるようなM&Aや新技術を得ることのできる成長投資はより積極的に実行してほしいと思っています。
遊技機事業については、構造改革及び中期計画の施策が着実に実行されたことで、収益性が著しく改善できたことは高く評価しています。引き続き、安定した利益を生み出すことで、グループの成長を下支えしてほしいですが、同時に新しい事業分野にも積極的にチャレンジしていっていただきたいと思っています。
その際にひとつ課題として挙げたいのは、せっかく同じグループ内なので、新規事業の検討にあたっては事業会社間でのノウハウや知見の共有をぜひ積極的に行っていただきたいという点です。そうすることにより、より一層グループ全体の成長を加速できるのではないかと考えます。
当グループは、非常に誠実で、高い責任感があり、目標に向かって努力できる集団であると私は強く感じています。そして、その集団は単なる守りにとどまるものではなく、新しい挑戦を好み、それを組織全体が受け入れる風土を持っています。この風土がさらに醸成されるよう、リスクマネジメントをはじめとした私の経験と知見が活かされる分野を中心に全力で社外取締役の役割を果たしていく覚悟ですので、ステークホルダーの皆様におかれましても、当グループのこれからの飛躍にぜひご期待ください。
※本記事は「統合レポート2023(2023年3月期)」から抜粋しています。