戦評・コラム
第53回JABA東北大会 予選リーグ vs 日本製鉄室蘭シャークス
VS 日本製鉄室蘭シャークス
場所:仙台市民球場
先発マウンドを担った古屋敷匠眞の快速球が、日本製鉄室蘭シャークスの打線を苦しめた。1回表は、一死からセカンドへの内野安打で出塁を許すも、3番打者を力感溢れるストレートでライトフライに討ち取り、4番打者からは見逃し三振を奪った。2回表の先頭打者は、1ボール2ストライクから投じた140キロ台後半のストレートで見逃し三振。7番打者に対しては、150キロ超のストレートでカウントを整え、最後はスライダーを選択して空振り三振を奪うのだから、快調な滑り出しだ。3つのフライアウトで三者凡退に抑えた3回表以降も、古屋敷のピッチングが相手打線を翻弄する。
「今シーズンの古屋敷はストライク率が上がった」
そう語るのは先発マスクの須田凌平だ。制球が安定したことで「楽に投げられている」と古屋敷は言う。良い意味で、マウンドの姿には「余裕」を感じる。その精神的な成長が顕著に表れたのは、7回表だ。6回表まで無失点ピッチングを続けていた右腕は、イニングの先頭となった4番打者に右中間への二塁打を浴びた。「少しバテてしまった」。その後、2つの四球を与えて一死満塁のピンチを背負うと、8番打者のセンターへの犠飛で1点を失う。それでも、後続をセンターフライに討ち取り、最小失点で凌いだ。その姿こそが、成長の証。四球や失点が続いて自滅していた昨シーズンとは明らかに違う。我慢のピッチングで、相手に傾きそうな流れを食い止める。苦笑いを浮かべながら「よく打ち込まれる」というオープン戦での防御率は6点台。だが、そこで見つかった課題をしっかりと見つめ直し、ピッチングの糧として挑む公式戦では、防御率2点台と安定したピッチングを続ける。その積み重ねてきた経験値もまた、今シーズンの「自信」にもつながっているのだろう。
7イニングスを投げて5安打1失点。
先発マウンドの重責を担った古屋敷は、自身にとって今シーズンの公式戦初勝利を手にした。
右腕の好投に負けられない攻撃陣が奮起したのは2回裏だ。一死から8番須田がチーム初安打となるレフト前ヒットで出塁。9番片岡大和のショートゴロで走者が入れ替わって二死一塁となり、1番植田匡哉の死球、2番高島大輝のレフト前ヒットで満塁の好機を掴む。3四球で満塁としながら無得点に終わったのは1回裏。一瞬、その「負」のイメージが脳裏に浮かぶのだが、3番北川智也がライト前へ2点タイムリーヒットを放って重い空気を振り払った。4回裏は、9番片岡のライト前ヒット、1番植田のセンター前ヒットなどで満塁として、4番中川智裕が押し出しの四球を選んで1点を追加した。2点リードで迎えた8回裏には、一死から途中出場の9番谷口嘉紀がレフト前ヒット。二死となったが、2番高島のレフト前ヒット、3番北川のライト前ヒットで、この試合4度目となる満塁の好機を迎える。4番中川のセンター前への2点タイムリーヒットが飛び出したのは、その直後だ。さらに、途中出場の5番黒川貴章が三塁線を破るタイムリー二塁打を放って6点目。試合終盤まで攻撃の手を緩めずに点を積み重ねた姿は、先発の古屋敷、そしてマウンドを譲り受けて無失点に抑えた石垣永悟と伊波友和に大きな勇気を与えたと言っていい。試合直後の西田真二監督は「次のステージですね」と語り、すでに次なる戦いを見据えた。リーグ戦3連勝という勢いも加え、チームは決勝トーナメントに挑む。
文 ・写真: 佐々木 亨







