戦評・コラム
第78回JABA東京スポニチ大会 準決勝 vs Honda
VS Honda
場所:神宮球場
1回表のマウンドで、初球から声を張り上げて気迫を見せる舘和弥の姿があった。先発右腕は、先頭打者を捕手へのファウルフライに討ち取ると、後続をレフトフライ、そして空振り三振に仕留めて上々の滑り出しを見せた。2回表も二塁手・北川智也の好守がありながら、三者凡退に抑えたピッチングには勝利への執念を感じた。
3回表はイニングの先頭となった7番打者を最後は伸びのあるストレートで空振り三振に抑える。8番打者のセンター前ヒットと盗塁で一死二塁とされ、9番打者にライト線への二塁打を浴びて1点を先制されるも、上位打線はきっちりと封じて最少失点で切り抜けた。
だが、4回表だ。Hondaの中軸に連打を浴びて無死一、二塁。犠打を決められて一死二、三塁とピンチを迎える。右打席に立つ6番打者には、カウント2ボール2ストライクからの5球目をセンター後方に運ばれて2点を追加された。中越え二塁打につながった痛恨の一球を、捕手の須田凌平は悔いる。
「追い込んでからの5球目、要求は外角へのストレートでしたが、真ん中に入ってしまった。あの一球でしたね……」
相手の先発左腕を攻略できずに苦しむ打線を考えれば、重い試合中盤での失点だ。1番植田匡哉がセンター前ヒットを放った1回裏、8番須田が左中間への二塁打を放った3回裏、そして3番高島大輝がセカンドへの内野安打を放った4回裏。いずれも先頭打者が出塁しながら得点できなかったのだから、楽観視はできない。それでも、投手陣が粘り強くマウンドを守る姿には、逆転への希望がなかったわけではない。
4回途中に舘からマウンドを譲り受けた岩本大地は、登板直後に2つの三振を奪って重い空気を振り払った。5回表は、一死から二塁打と四球で走者一、二塁とされるも、4番打者をレフトフライに、5番打者をショートフライに討ち取ってピンチを脱した。6回表は、先頭打者のセンター前ヒットを皮切りに一死二、三塁とされるも、やはり後続を討ち取って点を与えることはなかった。7回表の1イニングを完璧に抑えたのは、11年目左腕の横田哲だ。上位打線を手玉に取るピッチングには、風格が漂う。8回表からマウンドに上がったのは10年目の石垣永悟。「若い選手には負けてられない」と語る右腕は、今シーズンから精度が高まった変化球を散りばめ、時には伸び上がるストレートで打者を翻弄しながら、三者凡退に抑えた。9回表も2三振を奪う中で無失点に抑えた石垣は言う。
「中継ぎ以降の投手陣は『無失点』をテーマに挑んだ東京スポニチ大会で、大会を通じて無失点を継続できたことは、一つの収穫だったと思います」
9回裏に代打の神山福生がセカンドへの内野安打、一死から4番中川智裕がレフト前ヒットで続いて好機を掴み、5番黒川貴章のレフト前ヒットで1点を返すも惜敗。準決勝敗退に終わったが、投手陣の安定感を含めて実りのある大会だった。西田真二監督は言う。
「リーグ戦3連勝のいい雰囲気を準決勝でも出したかった。序盤に追いついていれば、試合展開は違ったものになっていたかもしれない。それでも、若手もベテランも、大会を通じて状態はよかったですし、いい雰囲気で戦ってくれた。有意義な大会だったと思います」
主将の宮川は、前を見据えてこう語るのだ。
「投手陣が頑張っていたので、攻撃で援護したかったんですが……。9回裏のような攻撃を序盤からできるとよかった。今後の大会に向けて、チームとして成長しながら頑張っていきます」
勝ち切れなかった現実を受け止めながら、今シーズンの手ごたえを感じて次なる大会へ向かって行く。
文・写真:佐々木 亨







