戦評・コラム
第94回都市対抗野球大会 東京都二次予選 vs 明治安田生命
VS 明治安田生命
場所:大田スタジアム
先発マウンドに上がった飯田大翔は感じていた。
「ストレートは良くもないし、悪くもない」
今シーズンの飯田は変化球主体のピッチングで活路を見出し、先発の一角を担っている。ただ、確かなストレートがあってこそ、変化球は生きてくるものだ。その頼れる変化球を生かしてくれるストレートに、絶対的な自信がなかった。
ピッチングスタイルは変わらない。「変化球で組み立てる」配球に、より依存しなければいけない現実はあったにせよ、飯田は多くの球種を散りばめながら1回表を三者凡退に抑えた。2回表は、イニングの先頭となった4番打者にレフト前ヒットを浴びた。打たれたのは変化球。その後、二死一、三塁と攻められ、8番打者には「高めに浮いた」変化球をレフト前へ弾き返されて先制点を奪われる。ストレートの走りがよければ、もっとピッチングの幅は広がっただろうか。打者にストレートを意識させる中で、効果的に変化球を使って凡打の山を築くのが飯田本来のピッチングだとすれば、この試合はイメージ通りのピッチングとは言い切れなかった。頼らざるを得なかった変化球が失投となり、1点を奪われたのだから悔いは残る。ともに二死からヒットを浴びた3回表と4回表は無失点に抑えたが、5回表は先頭打者に右中間への二塁打を浴びた。その後、連続四球で一死満塁のピンチを迎えた飯田の球数は80球に達した。3人の走者を塁上に残したまま、先発右腕が降板を告げられる。
「最低でも5イニングスは投げたかった……」
5回途中で被安打5の1失点。先発投手としては及第点のピッチングと言えるだろうが、「今シーズンは投手陣の軸となって投げる」と言い切る飯田にとっては、納得できる内容ではなかった。
4回裏に4番中川智裕の右中間へのタイムリー三塁打で同点に追いつく試合展開で、飯田からバトンを譲り受けた古屋敷匠眞は相手に流れを渡さない好投を見せた。5回表一死満塁でマウンドに向かった右腕は、「めちゃくちゃ緊張して、あまり記憶がない」と登板直後の胸の内を明かす。「ずっと足が震えていた」と苦笑いを浮かべるのだが、相手の中軸打者から2者連続三振を奪ってピンチを脱するのだから、言うことはない。6回表は一死から四球を与えたが、後続を力のあるストレートで併殺に討ち取って無失点。7回表は、140キロ台後半のストレートで押しまくり、三者凡退に抑えて味方の援護を待つ。二死からライト前ヒットを浴びた8回表も、後続を気迫のピッチングで討ち取って無失点。わずか1安打に抑えた古屋敷の好投なくして、試合終盤まで同点、その緊張感がスタンドにまでヒシヒシと伝わってきた接戦にはならなかったはずだ。
熱のこもったピッチングを続けたことで、8回表を終わった時点で「限界」を感じたという古屋敷に代わり、9回表のマウンドに上がったのは舘和弥だ。一死一、二塁から、2番打者にカーブをライトスタンドに運ばれて3失点……。2番高島大輝から始まった9回裏の攻撃は、チャンスは一度も訪れずに無得点……。結局は3点差をつけられての敗戦となったが、最後まで勝利を信じて戦い抜いた姿には「明日への希望」を感じた。無死二塁と攻めながら、バントのミスもあって無得点に終わった2回裏。同点に追いつき、なおも一死一、三塁と攻めながら併殺で勝ち越すことができなかった5回裏。さらに、わずか1安打で6三振を喫した6回以降の力なき攻撃もそうだろう。課題を探せば、いくつかのシーンが思い浮かぶ。
それでも、チームが立ち止まることはない。悔しさを力に換えて前へ、前へと進んでいくしかない。西田真二監督は言うのだ。
「次の試合に向けて、気持ちを切り替えていくしかない」
戦いの舞台は、第2代表ゾーンへ。東京ドームへの道が切り開かれる「勝利」を追い求める試合は、まだまだ続く。
文 : 佐々木 亨
写真:政川 慎治







